Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le coup de cœur d’elle

人にこんな本を勧められた。

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「女性のための戦(いくさ)術」とでも訳せましょうか。

孫子の「兵法」は以前から気になっていたけれど、まだ読んでいない。その兵法からヒントを得て、女性のために書かれた本らしい。

勧めてくれたのは、息子の新しい友達のママンだ。日曜の午後、その子の家に遊びにおいでとお呼ばれして、息子だけドロップオフして帰るつもりでいたのが、お茶を勧められてつい長居となった。

セシルという名のその初対面のママンはシングルマザーで、ファイナンスの仕事を立派にこなし、パリの真ん中に充分な広さのアパートを持っている。フランス人にしては珍しいくらい気遣いの細やかな、華奢でにこやかな女性だった。

統計的に、パリの夫婦の半分は離婚すると聞くけれど、息子のクラスメイト達をみているとそれが事実であるのが分かる。別々に暮らすことになったママンとパパがどのように共通の財産(子供)を分かち合うかについては、人それぞれで、1週間ごとの交代制だったり、平日ママン週末パパ制だったり、普段はママンでヴァカンスはパパ制だったり。件のセシルは、土曜日以外は毎日彼女が子供の面倒を見ているようだ。

初めの30分は当たり障りのない学校の話などでも充分盛り上がるけれど、お茶もすっかり冷めて3時間も向き合っていると、段々プライベートな本音の話になってくる。子育ての話をしていて、彼女の目から思わずポロリと涙がこぼれたりした。シングルではなくったって、その辺りの心境はよく分かる。誰かとまた一緒になりたいと思ったりするの?と聞くと、少し考え込んでから、「人は一人で生きていくようには出来ていないと私は思うから、愛情面の喪失感はハッキリ言って大きいの。だから、もう一度誰かと家庭を持てたら と思うことはあるわ。ただ、その割には全然探しちゃいないんだけれどね」と、いたずらっぽく舌を出して笑って見せた。

パートナーはもう懲り懲り!と独り身を謳歌する人もあれば、自由な恋愛を楽しむ人もあり、彼女のように家庭的であり続けるが故に寂しい思いをする人もあり。分散した家族の一番ハッピーな収まり方ではないかしら、と個人的に私が思うのは、famille recomposée だ。日本語では何と呼べばいいのだろう。再構成ファミリーかな?子連れのシングルマザーとシングルファーザーが、それぞれの子供も一緒に同棲してできるニューファミリー。子供がいることの大変さはお互い分かっている。それでいて、パートナーとは同じ財産(子供)を共有していないから、相手に対しての要求は少なくて済む。賑やかに、案外上手くいっているケースが多い気がする。それどころか、楽しそうでさえある。

 

私は人にどんな本を読むのか聞くのが好きだ。自分からは食指の動かない本を発見できたり、相手の世界をより知ることができたりするから。セシルの淋しさの告白で空気が少しシンミリとなったので、少し話題を変えて、彼女にもお勧めの本を聞いてみた。自分を活気付けるために、自己啓発系の本をよく読む という答えが返ってきた。ビジネスに関する啓発本も含めて、今まで読んだその類の本の中で特にお勧めなのはコレ、と言って出してきたのが、この L'art de la guerre pour les femmes だった。闘う人なのだな、と思った。うんうん、よく分かる、人生は何にしたってファイトだ。

特に貸して欲しいと頼んだ訳でもないけれど、返すのはいつでもいいから、と言って持たせてくれた。女性は読んでみて損はない、とのこと。

パラパラめくってみると、所々に赤いアンダーラインが引かれている。定規を使っているあたりに、彼女の几帳面さが窺われた。

 

年が明けてからというもの、新しい出会いが続くこの頃だ。