Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Cuisiner pour ne pas cuisiner

手抜き料理について

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料理が好きだと言うと、こっち (フランス) でもあっち (日本) でも、決まって「どんなものを作るの?」と聞かれる。そうすると、いつも返事に窮してしまう。

日本では、こちらが次の句を継がないうちに、「わぁ、いつもフランス料理作ってるの?」と目を輝かされてしまうし、フランスでは、こちらが口を開く前に、「和食作るの?ワタシ (ボク)、スシ大好き!」と、この週末にでも押しかけて来そうな調子で叫ばれてしまう。

そして私の答えはと言えば、残念ながらどちらとも付かないのだ。

 

だいたい、料理が好きと言うよりも、正しくは食べるのが好きなのであって、お世辞にも大したものは作らない。フランス料理とも和食とも呼べるようなものではない。子供が生まれて毎日欠かさず台所に立つようになってから、その傾向はますます強くなり、南仏でのヴァカンス中などは、なんとか火も使わず美味しいものに有り付けないものかと日々心を砕いて (怠けて) いる。

 

そんな訳で、ここのところよく作っているのが、夏野菜のオーブン焼きである。汗一滴垂らさずに出来上がる手軽さがお気に入りだ。

 

夏休みの始めに、働くママンであるセシルと子供たちを動物園に連れて行った時、「忙しい日は子供に何を料理して出すの?」と聞いたら、「料理はしないの」と返事が返ってきた。外食やテイクアウトで済ませているのかと思ったら、さにあらず。「クルジェット (courgette / ズッキーニ) とかオーベルジンヌ (aubergine / ナス) を半分に切るでしょ?それにオリーブオイルを垂らして、オーブンに放り込んでお終い!」 彼女が野菜をザックザックと手際よく切り、オーブンにパイレックスの厚いガラスプレートを突っ込んでパタンと蓋を閉め、一丁あがりと両手をパンパンはたいている様子が目に浮かんだ。そのアイディアはイタダキだと思い、それからはよく真似をさせてもらっている。慎ましやかなセシルはそれを料理と呼ばないけれど。

セシルと違って、今のところ私はワーキングママンではないので、野菜は半分に切る代わりに薄い輪切りにして交互に重ねている。そんな面倒な作業は省けばいいのに と夫に言われるけれど、料理をクリエーションの一つとして好んでいる私にとっては、こういう作業こそが楽しい。

目下、一番のお気に入りは、ズッキーニとナスとトマトの重ね焼きである。緑と紫と赤が代わる代わる重なって、目にも楽しく味もよい。南仏の家は近所にオリーブオイルの製造場があるので、そこで入手した上質のオイルをたっぷりかける。バジルが手に入った日には、それを刻んで散らせば更に幸せ気分だ。残った分は冷蔵庫に入れて冷製にしてもおいしい。

今日は、冷蔵庫に大量のポムドテール (pomme de terre / じゃがいも) と、ズッキーニが一本、小さなトマトが一つだけ残っていたので、それを使った。粒マスタードをオリーブオイルとレモン汁で溶いて、かけて頂いても美味しい。

 

その他には、細かく刻んだ紫キャベツに黄色いトウモロコシをぱーっと散らしたサラダや、真っ赤な刻みトマトの上に宝石のようにツヤツヤの緑の剥き枝豆を飾ったサラダなどが、彩りもヴィヴィッドで、私の夏のお気に入りだ。後者はドレッシングにバルサミコと醤油を混ぜて使う。どれも手抜き料理だけれど、素材が良ければそれだけで美味しい。あとはお肉か魚でも焼いて、夫にはパンを付け合わせれば、充分お腹いっぱいになるというものだ。