Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

L’expo Huysmans

土曜日。息子はパパに任せ、ひとりでオルセー美術館へ。

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お目当ては、19世紀の美術評論家、ユイスマンに焦点を当てた展覧会。ゆっくり半日かけて堪能した。

目に映ったものを、豊かな言葉にして紡ぎ出す才ある人。著書に、まだ読んでいないけれど、澁澤龍彦の訳による小説「さかしま」がある。

 

アカデミックで形式主義的な絵画を嫌い、辛辣な批評も多々残した。たとえば、血色の良いギリシャ神話の神々を描いた絵画に対して、ピンクと白のマジパンで出来た人物像 と言ったり、ローマ時代の歴史的悲劇を描いた壮大な絵画に対して、奥に描かれた女性は「お風呂の準備が出来ましたよ」と呼びに来ているのだろうか と言ってみたり。好みがはっきりしていて、揶揄に全く遠慮がない。私など第三者は、そんなユーモアのある毒舌に思わず笑ってしまうのだけれど、批判を受けた当の画家達はどのように受け取っていたのだろう。

 

現実主義のドガや、幻想的なギュスターブモロー、霊験あらたかな画家ルドンの絵画にお目にかかれたのも嬉しかった。この三者には、ユルスマンも一目置いていたらしい。作品を讃える言葉も美しい。

 

ガラスケースに入って展示されていたユイスマンの手書きのノートは、修正の跡が盛りだくさん。より正確な言葉の描写を求めて、何度も何度も手直しを入れた様子が窺われる。

 

それにしても、オルセーは日がな一日過ごすのにとても良い場所だ。待つ人の多い駅舎を美術館にしただけに、奥行きの深い館内に沿って、一休みできるベンチが線路のように続いている。ここでガイドブックを紐解いたり、音楽を聴いたり、本を読んだりすることができて素敵だ。美術鑑賞の方法に広がりが出る。

インスピレーションに満ちた半日だった。

 

そうだ、展覧会に足を運ぶ度に、日本の父や親愛なる叔父叔母達に、その感想を近況便りとして絵葉書を出そう、と思い立った。我ながらいい思いつきだ。

 

メトロに向かう帰り道、途中の観光土産屋のショーウィンドウに色とりどりのベレー帽が飾られていた。そうだ、これを被って、気分も新たに息子とパリ観光しよう、と思い付く。我ながらこれもいい思いつきだ。

残念ながら、気に入った色のベレーは私の頭に合うサイズが売り切れで買って帰れなかったけれど、つまりは「人生を遊ぼう!」ということなのだ。

 

家に着く頃には時計は7時を回っていた。鍵穴に鍵を差し込んでガチャガチャ言わせていると、音を聞き付けた息子が玄関に躍り出てきた。首に抱きついて甘えっ子のポーズ。でも開口一番は、「お帰りなさい」でも「Tu m'as manqué (寂しかったよ/ 帰ってきて嬉しいよ) でもなく、「お腹が空いた!」。やっぱり。