車窓から見た雨上がりの日の光。
ハッとするほど綺麗だった。
Pour que la vie soit belle, il suffit d'avoir un brin de soleil après la pluie.
いつだったか、アウシュヴィッツから奇跡の生還を果たしたユダヤ人の男性が、かの地で見た夕陽の美しさに心を打たれた思い出を語っていた。想像を絶する苦境に身を置きながら、そういったものに感動せずにはいられない無傷の心が、底知れぬ生命力が自分の奥底にあるのだと改めて驚かされた、と語っていたように記憶している。その、いかにしても犯されることのない「美への感動力」こそが、間接的に彼の生還を現実のものにしたのだと。生き抜く希望を失わないための力になったのだと。
生命力というのは、インテリジェンスとは別物なのだろう。ささやかな美にも心を奪われる、白痴のような単純な心を持ち続けたい。
宮沢賢治の雨ニモマケズは、そんな心を詠ったのかもしれないとふと思った。
美は力。感動は力。