Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Une soirée Ella

台所で、夕飯の支度をしながら音楽をかける。

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今日はエラ・フィッツジェラルド。惚れ惚れする歌声だ。先日からサマータイムに切り替わったので、窓の外はまだ随分明るい。思わず鼻歌が出る。

 

そう、見えない敵には、やはり見えないパワーで太刀打ちするに限る。

好むと好まざると、毎日耳に入ってくるのはパンデミックの事ばかり。そのムードにすっかり包まれてしまいそうな時は、音楽でそれを追い払う。こういうご時世だから、イヤホンで耳を塞いで自分だけの世界を満たすよりも、広い空間にメロディーを放って空気を一変させるほうが断然よい。まるで壁紙の色でも変えたように、部屋の空気が瞬時に一変する。音楽のパワーは偉大だ。

 

最新のニュースは気になるけれど、ラジオを聞くのは1日1回、昼食の準備の時間だけと決めている。居間のテレビは壊れているからどうせ点けない。PC を開くのはいつも息子が寝付いた後で、1日の終わりはニュースで締め括くる気がしない。目から耳から四六時中芳しくない情報ばかり受け取っていたら、気が滅入ってしまうだろう。

 

エラ・フィッツジェラルドの 3曲目に I love Paris がかかり、ちょっっとノスタルジックな気分になる。パリがパリらしく賑やかだった、ついこの間までの日々を想う。

 

今夜の前菜はアーティチョーク(あざみ)。モーリス・センダックの絵本に登場する怪獣の前足みたいな形をしている。花弁の先っちょにトゲのある巨大な蕾だ。丸ごと蒸したものを、一枚一枚花びらをむしってドレッシングに浸して頂く。最後に辿り着く芯のところが一番おいしい。味は日本の春の山菜にも似た苦味がある。この苦みは、「Attention (気をつけて)! 新しい命をあまり奪い過ぎてはいけませんよ」という、食いしん坊に向けての自然からのメッセージなのだろう。