4月4日の昼下がり。
陽射しはすでに暖かく、風はまだ冷たい。
明るいお日様に絆されて表に躍り出てはみたけれど、思いのほか寒冷な空気に当たって、軽く羽織ったコートの前をしっかり合わせ直す。それでもマフラーはもうしない。だって4月ですもの。
春はそれだけで喜びに値する。
街路樹の新緑がキラキラと目に眩しく、木々は枝先に黄緑の炎を灯した燭台のように見える。幸せな光景だ。
友人アデルに教わってからこの頃よく聞いているラジオ番組 Les pied sur terre で、先日、「美は世界を救うか」というテーマのルポルタージュを流していた。Quelle question ! と思いながら耳を傾けた。
考える以前に答えはとっくに出ている。こんな麗らかな春の日などは特に明白だ。少なくとも私は日々この世の美しさに癒されている。
散々物議を醸していた清掃業者のストライキは、ようやくひと段落したようだ。すっかりゴミに埋もれてマルセイユのようになっていたパリが、再び華のパリたる姿を取り戻しつつある。
それにしても、古のパリは悪臭漂う町だったそうだけれど、下排水の問題は解決したにしても、それに代わって現代の私達の廃棄物の多さといったら!ストライキ中のパリは、丸ごとゴミの展覧会のようだった。社会学的に見ると面白い光景。ただえさえ狭い歩道に、日々堆く積み上げられていくその量には目を見張った。そのうち、ゴミの山の底から得体の知れないベトベトしたモンスターが這い出てきそうな、どこかSFチックでシュールな光景。この街がロマンチックなのは、一重に清掃業者達のお陰なのだ。
さて、
近況と言えば、過ぎたる立春の日から野草について学び始めた。これがとても楽しい。
思えば、都会でロックダウンを経験したのを機に、植物への想いが徐々に抑え難く膨らんだような気がする。
先日ブーローニュの森で摘んだチャービルをたっぷり刻んで煮込んだミートボールは、香りよく格別に美味しかった。
バスケットを片手に近郊の森に足繁く通う春になりそうだ。
写真はアデルの目に映った光景。つい先ほど出掛け先から送ってくれたSMS。彼女も春の陽気に心躍らせているのだろう。「こういうのを見るとMihoのことを思う」とのメッセージ。嬉しい。
私の緑好きは、どうやら友人たちの間で既に周知の事実となっているらしい。それも悪くないなと思っている。