朝方、息子が頭が痛いと訴えた。
熱を測ると微熱があった。
こんなご時世なので少し心配したけれど、水を飲ませて午前中一杯ベッドで休ませたところ、ケロッと治ってしまった。ホッと胸を撫で下ろす。
ところが夜になって寝床に付くとまた少し心細くなったのか、頭痛が戻ってきて眠れなかったらどうしようと呟く。眠くなるまで、何かいいこと、楽しい事を考えればいいじゃない?と返すと、しばらく黙ってから、日本にこの夏行けなくなったら、もうずっと行けなくなっちゃうのではないか と言い始めた。
日本で過ごす夏休みは、彼にとって楽しいことの代表選手なのだなと思った。ジィジ、こと私の父がそのこと知ったら、目尻をうんと下げて喜ぶだろう。
夏に行けなかったら冬に行けばいいじゃない。冬がダメなら春でもいいでしょ。行けるようになった時にちゃんと連れて行ってあげるから。
でもね、
頭の中はいつだって自由なのだから、日本に行ったら何をしようか、ジィジと一緒にどこに行こうか、楽しみに想像すればいいじゃない?あなたの思いが先に日本に旅すれば、きっと体は後からついて行くとママは思うよ。
まだすっかり納得がいった訳では無さそうだったけれど、取り敢えずは安心した様子で、寝る前にママと話せて良かった と言いながら、ギュッとしてほっぺにチュッとしてから腕を離した。
息子を早く寝かせたいがために、自分は夕ご飯を食べ損ねた事を思い出し、遅い夕飯、あるいは早めの夜食におにぎりを握ってみた。思いを込めて握るおにぎりは、息子に時々作るけれど、自分のために握ったことなんて殆どない。今夜のおにぎりは、自分のためと言うよりは、故郷日本への想いを込めた。
それにしても、ママンの故郷をいつのまにか自分の故郷のように思っている息子が微笑ましい。でも、この「勘違い故郷」には実は私も覚えがある。母の故郷の南の島は、昔も今も私の故郷なのだ。
母は偉大なり。
母なる大地は偉大なり。