Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Merci ma chère Damme noire

今日も快晴、洗濯日和。

 

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現在、パリの気温は、階を飛ばして一気に屋上を目指すエレベーターのごとく上昇中。

つい2週間ほど前までコートなんて羽織っていたのに、今週は30度を超える。例によって、パリが得意とする掌を返すような季節の変化。来る夏は猛暑になりそうな予感だ。

 

息子は元気に遠足に出かけた。

いつになく張り切って自分から起き出し、眠いの疲れたのといった文句も言わず、チャッチャと準備して登校した。モチベーションは何にも勝るビタミンだ。

 

軒の上に巣を作ったスズメが今朝もチュンチュン賑やか。

台所を片付けて、お茶を淹れ、息子のお弁当の残りで朝ごはんとする。サンドウィッチの代わりに日本のフィンガーフード、おにぎりと、日本のピクルス、浅漬け。息子には、檜のわっぱに入れて持たせた。伝統工芸を受け継ぐ職人さんの手による素晴らしいわっぱは、私のキッチンの宝物のひとつ。殊に暑い季節は、保温ジャーに代わって大活躍する。質素なおにぎりも豪華になる、魔法瓶ならぬ魔法の箱なのだ。

 

宝物と言えば、我が家のキッチンの鍋類は全て目利きの母が持たせてくれた「嫁入り道具」で、空き巣が入っても、この一式さえ残れば私は取り敢えず安泰という代物。

その中の一つに、黒くてどっしりとした炊飯釜があった。特別な技術で、外側の底の部分まですっぽりと釉がかかった珍しい土鍋だ。これを使ってじっくりと炊くご飯は感動的に美味しい。毎朝毎夕せっせと使って10年以上経つけれど、最近底に薄っすら亀裂が入り、先日、とうとう炊飯中にポタポタと水が漏れ始めた。一生モノと思って大事にしていたけれど、「形あるモノいつか壊れる」。退職の時が来てしまったようだ。

 

人にしてみたら、渋い歌人のような貫禄の土鍋。感謝状を宛てるとしたらこうだ。

貴方のお陰で、毎日美味しいご飯が頂けて幸せでした。フランスでは特に稀有なお姿ですから、隣人のイザベルやクリステルがお茶に来た時も、キッチンで存在感のある貴方に気が付かずにはいられませんでしたね。私も鼻が高かったものです。母と一緒に、日本橋で貴方を初めて見染めた日のこともよく覚えています。ごはん好きな息子は、まったく貴方のお陰で今日まで育ったようなものです。

長年ご馳走様でした。家族一同、感謝を込めて。

 

使えなくなっても、思い入れがあるので処分出来ない。土と種を入れて、植木鉢にして緑を育ててみようかな。

 

今朝のご飯は、そんな訳でパスタパンを使って炊いた。ルックスがあまり好きではないことも手伝って、今後も電気炊飯器を買う予定はない。私のささやかなこだわりなのだ。