Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Jimmy, le pie

健やかな晴天の日が続く。

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朝、居間の窓の外を眺めると、カケスが一羽芝生の上を散歩していた。

お馴染みの黒と白のツートーンカラー。でもよく見ると、翼の一部は美しい藍色をしている。いかにも物思いに耽っている様子で、地面を眺めながらひと足ふた足進んでは、ふと立ち止まって首を傾げてみたり。まるで庭を思案しながら歩く哲学者だ。本当のところは、朝ごはんに太っちょのミミズを探しているだけなんだろうけれど。

 

子供の頃に読んだ本に、カケスのジミーというお話があった。だから、カケスと聞けば反射的にジミーと浮かぶ。あれはどんなお話だったかしら。カケスというのは、確か光る物をコレクションする習性のある鳥だ。カケスのジミーのお話には、スプーンを拾って喜んで巣に持ち帰るシーンがあったような気がする。

 

息子の部屋の窓からは、お隣さんの庭の桜の木が見える。花の頃には随分目を楽しませてくれたものだけれど、今では緑のサクランボを実らせている。

 

いつか夏の日本帰省で息子と山梨を訪れた時、ヤマネ博物館というのを偶然見付けて入った事がある。間違いなく世界で一番小さな博物館で、ネズミに似たそのかわいらしい小動物見たさに入館したというのに、肝心のヤマネはどこにもいなかった。小さかった息子はひどくがっかりして、お土産コーナーにあったヤマネの縫いぐるみを欲しがって泣いた。それ以来、ヤマネというマイナーな動物は、私達親子の会話に頻繁に登場するようになった。

例えば、木になる小粒の実を見れば、私たちはそれを総じて「ヤマネちゃんのオヤツ」と呼んでいる。植物にあまり関心のない息子は、どこそこの木になんとかの実がなっているよ と言ったところで振り向きもしないけれど、「あそこにヤマネちゃんのオヤツがたくさんあるよ」と指差すと、どこどこ?と俄然興味を示す。

 

そう言った訳で、お隣さんの桜の木にはヤマネちゃんのオヤツがたわわに実っている。

 

と、そこへ、さっきのカケスのジミーがやって来て枝に止まった。これはこれは。ヤマネちゃんのオヤツではなく、ジミーの朝ごはんでしたか。太っちょミミズでお腹を満たした後のデザートかな?青いサクランボをひとつふたつついばんで、首を傾げてから、「なーんだ、まだ美味しくないや」とでもいった具合にどこかに飛んで行ってしまった。

サクランボがもっと赤くなった頃、また戻ってくるかな?

 

 

(追記/訂正 : 後になって分かったことだけれど、サクランボをついばんでいた写真の pie (ピ) は「カケス」のジミーではなく、お喋り「カササギ」であった。私の早とちり。因みに、カケスはフランス語で geai (ゲ)。ピとゲ。彼らは親戚なのだそう。)