Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Bienvenue au manoir

数日前のことだけれど、友人キャロリーヌの館に仲良し3人組が集まり、お茶を頂いた。

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私がふざけて館 (やかた) と呼ぶのは、彼女の家が味のある古い一軒家で、さらに、彼女が本来であればマルキーズ (伯爵夫人) と号の付く由緒ある家系出身の淑女だからある。しかし、そんな事はおくびにも出さない気取らぬ性格で、革ジャンにタイトなパンツルックがよく似合い、最近、耳に三連のピアスの穴まで空けた思春期ママン、ポップでチャーミングな美しい女性なのだ。

 

家はそこに住む人を表すと言うけれど、キャロリーヌの住まいはとても個性的だ。古くて美しいものが所狭しと詰め込んである、彼女にとっての宝箱のような家だ。彼女によって価値を見出された年季の入ったオブジェやガラクタ達が、不思議に居心地の良い雑然さであちらこちらに配置されている。ひとつひとつ微妙に模様や形の違う青い絵皿。柄のところが象牙の古風なバターナイフ。ガラス皿に枯れてしまった庭のバラの花びらを集めて飾ってあるのも、優しいパステルカラーのボンボン(キャンディー)の缶も、使い込んだ濃い紫のリネンのランチョンマットも、みんな独特のよい表情をしていて、キャロリーヌのお眼鏡にかなったオブジェ然りとしたハーモニーを醸し出している。そんな空間に招かれる度に、宝探しに来た気分になる。フランス語で言うところの、まさに la caverne d'Alibaba (アリババの洞窟)。どういう経緯でそれらが彼女の手元までやって来たのか、そんな逸話を聞くのも楽しい。大概は、親戚に譲ってもらったお古だったり、蚤の市の超特価の掘り出し物だったり、はたまた、道で拾ったオブジェだったりするのだ。

 

女性同士で頂く朝のお茶のテーブルには、髪をゆったりとしたシニョンに結ったマダムの頭のような特大ブリオッシュと、肌の白い磁器のような甘いメレンゲ菓子が並んでいた。これまたこの館のムードによく調和した展示物のよう。

 

庭には、去年私がイギリス旅行帰りに彼女に譲った bee bomb という植物のタネのお楽しみ袋が、一年経って紫色の花を咲かせていた。今度は私が手みやげにその花を幾本か貰って帰った。

 

物が少なく、スッキリとよく整理整頓されていて手入れの行き届いた家も清々しくて好きだけれど、愛着のある物に囲まれた物語りのある家も楽しい。いつかどこかで chaos organisé (計算されたカオス) という言葉を耳にしたことがあるけれど、キャロリーヌの館は désordre esthétique (美しい混沌) が占拠する魅力的な空間なのだ。