息子と2人で海に来ている。
潮の香り、カモメの鳴き声。
風は涼しく、太陽は暖か。海は穏やか。
息子は私の傍で砂の城を作っている。私はヴァージニアウルフの本を広げる。「波」という題名だ。数行読んだところで息子の「ママ見て!」で注意が逸れる。そしてまた1ページも進まないうちに、今度は「こんな貝がらが出てきたよ」で目を上げる。また視線を落としてしばらくすると「ほらすごいでしょ、ママ!」。目を落とすたびに、今さっきまで読んでいた行を探しながら何度も読み返すので、まさに寄せては返す「波」のような読書だと我ながら苦笑してしまう。
日焼けした男の子たちが、エルメスという名の可愛らしい子犬と遊んでいる。そんな姿が眩しく微笑ましい。子供というものは、どこにいても絵になるなとつくづく思う。
今は夕方の6時。日の入りまでまだ4時間ある。
今年の私達の夏休みは、ノルマンディーでスタートを切った。