Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

L’hommage à Maître Yoda

火曜日。月曜に会ったお料理上手のソニアに教わった摩訶不思議なレシピを試した。

 

f:id:Mihoy:20201231101317j:image

 

日本ではあまり馴染みのないヨーロッパ野菜 (?) にセロリの根っこというのがあって、私はこれをマルシェで見かける度にスターウォーズのヨーダを思い出してしまう。似ているのだ。色といい形といいデコボコ具合といい、大きさも含めてあの頭にそっくりなのだ。

 

ソニアのレシピというのは、このゴツゴツした可愛げのない緑の根菜を真っ二つに切って、その断面に蜂蜜とコショウと塩を混ぜたものを塗り、「糊でくっ付けて修復する要領で」ペタリと貼り付け、クッキングペーパーにそのままくるりと包んでオーブンで焼く というもの。なんて面白いレシピなのかしらと思った。

セロリの根っこは、ちょっと形容し難い独特の香りのする野菜。そこへ甘くてスパイシーでしょっぱい「糊」を塗ったら、一体どんな味がするのだろう?好奇心の塊のようになった私が、何度くらいの温度でどのくらいの時間グリルするの?と聞くと、「さぁ、いつも適当だから。オーブンにもよるけれど、ウチの場合はしばらく忘れて放っておくのよ」という答え。200度で30分よ なんて現実的な返事をされるよりも、よっぽど好奇心をすぐられる。もうオーブンの中に忘れ去られた仙人ヨーダの姿が頭の中から離れない。忘れた頃に出来上がったものは一体どんな香りがするのだろう?「外側がキャラメリゼされてね、美味しいんだから」と、心憎いかな、とどめのお言葉。

翌日さっそくスーパーに走り、小ぶりのヨーダの頭をゴロンゴロンと2つ買い求め、キッチンで実験を開始した。ソニアに「これからエクスペリエンスを始めるからね」とSMSを送る。美味しくできたかどうか教えてねと返事が届く。

さて結果はいかに?

我が家のオーブンは火力が強いので、忘れるほど放っておかなくとも焼き上がるだろうとタカを括ったのが間違いだった。一緒に入れたジャガイモに焦げ目が付いても、皮付きのまま丸ごと放り込んだ玉ねぎの芯に火が通っても、強者ヨーダはまだ焼けない。ついにうっかり本当に忘れてしまった頃、ようやく焼き上がった。そう、ソニアの指示は正しかったのだ。

 

出来上がったものは、果たして不思議な味がした。あま〜い食べ物を想像していたのだけれど、さにあらず。あの蜂蜜のねっとりとした甘さはどこへやら。甘味は確かに残ってはいるのだけれど、きちんと「デザートなんぞではない」味がした。待ちきれない夫と息子は、焼き時間中に別のものを食べてしまってお腹が満たされてしまい、結局この実験結果には手を出さなかった。私はひとり残されたテーブルで塊をギコギコと捌いて賞味した。ひとりでには思いつかない、なかなか面白い実験料理だった。

ソニアに感想のメッセージを送ると、言い忘れたけれど蜂蜜はアボカドのものがベストなのだと返事が届いた。今度、一緒にあれこれ蜂蜜を替えてエクスペリエンスしてみようという話になった。もちろん、再びロックダウンにならばければの話だけれど、楽しみだ。