Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Boutons de soleil

2月は春を先行するミモザの季節。

 

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それにしても毎日よく降る雨だ。セーヌ川はぐんと増水して、カフェオレ色の水の帯がなみなみとパリの真ん中を横たわっている。フランス南西のボルドーのあたりなどは、25年ぶりの大浸水に見舞われているそうだ。家々は水びたしで、街は悪臭が漂っています と、ニュースの特派員が伝える。なにかと都会にとって受難の続く昨今だ。

この雨は来週も「 sans discontinuité (ソン・ディスコンティニュイテ / 断続しない) でしょう」という言葉に、いかにもフランスらしい二重否定表現だなとニヤリとした。「降り続くでしょう」と言えばストレートなのに。

 

昼食の片付けをしながら、引き続き居間のテレビの報道に片耳を傾けていると、次はひときわ明るいニュースが流れた。

夏から雨が多かったお陰で、今年はコートダジュールのミモザが花をたくさん付けているという。ミモジスト (Mimosiste) という言葉が存在するのを初めて知った。ミモザ栽培業者のことを指すらしい。そんな愛らしい職業があるなんて。

南仏のよく晴れ渡った青い空の下、小高い山の上で、よく茂ったミモザの木々の間を幸せそうに枝を集めて歩くミモジストのムッシューの姿が映し出された。白髪で、真っ赤なセーターを着ている。その腕に、黄色い蛍光色の泡のような花を付けた枝をどっさり抱えている。目の覚めるような歓喜のイエローだ。

確か、この花には甘いハーブのような独特の香りがある。田舎味のある日なたの香りだ。南仏恒例のミモザ祭りは今年は中止になってしまったけれど、満開のミモザの森はさぞ芳しいことだろう。浸水した都市の便りと対照的だった。

 

遅い昼食の後、息子を連れて買い物に出ると、近所の広場のところで家族連れのエドウィッジにバッタリ会った。雨の中、傘もささずに (フランス人はあまり傘を持ち歩きたがらない)、3人の子供たちを後ろに従えた仲良し夫婦の姿は、まるで公園を横切る鴨の一家のようで微笑ましい。週末は決まって家族揃って散歩に出る彼らだ。すれ違うたびに平和な光景だなと思う。私の友人達の中でも最も敬虔なカトリックファミリーだ。頭に思い描く家族の理想がピッタリ合致している夫婦だ。

この雨で、寒くて、その上カフェもミュゼもシネマもカルチャーは全て閉鎖でしょ、散歩に出たはいいけれどどこを歩いたらいいかちょうど途方に暮れていたのだけれど、あなた達はどこ行くの?と訊くので、「ラ・バ 」と言いながら広場の向こうの日曜大工店を顎でしゃくって見せた。(買い物カゴと傘で両手が塞がっていたので。) カルチャーの代わりに、どう?一緒に雨宿りに行く?と訊くと笑って首を横に振った。買いものがある訳でなし、行き場が無いから帰ることにするわ、と。

日曜大工店は、レジの前に今までに見たこともないような長蛇の列が出来ていた。18時前には帰らなくてはならないので、夕方の買い物ラッシュが凄まじいのだ。結局、買おうと思っていた植木鉢を諦めて、私たちも当てどない雨の散歩をしてから家に帰った。

春よ来い 早く来い