Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Printemps précoce

うららかな午後


f:id:Mihoy:20210223005918j:image

 

春風の吹く晴れの日に表に出る時は、「さあ世界がどんなか見に行こう」という気分だ。新しい季節の美しさというのは、それだけで目を見張るものがある。

 

急に暖かくなって、公園には人がたくさん出ていた。芝生の上にかわいい紫のクロッカスが咲いている。手前にまず一花、少し離れて向こうにもう幾花か。ド、レミファソと、まるで見る音楽のよう。

 

買い物に出ると、ポストオフィスの横にある桜が開花していた。例年よりもずっと早い春の知らせ。この街では、例年のごとく桜が咲いても誰も立ち止まらない。ここに何年暮らしても、やっぱり私はジャポネーズなのだなぁと思う瞬間。

 

東京の伯父から、彼が翻訳を手掛けているカナダの戯曲をひとつ送ってもらった。父に言わせると伯父は「老体に鞭打って、狂ったように机に向かっている」そうだ。この世に作品を伝え残すのが彼の使命、そんな伯父を支え見守るのが伯母の使命なのだろう。使命は生き甲斐、パッションこそ貴重、俺のようなビジネスに生きた人間はそれに比べると残すものが何にもない、と父は言う。成功とは何ぞや?と、しばし考えた。自分の後に何かを残すことだろうか。

 

送ってもらった戯曲というのは、文明の利器を極力拒み半自給自足の生活を送っているアーミッシュの人たちの物語。彼らの生活信条にはかねてから関心があったけれど、世の中がこんな風になってからはますます興味を持っている。息子の2月のヴァカンスの間、読書の時間はしばらくお預けだけれど、もう3月はすぐそこまで来ている。

 

今週は、ドイツに住む夫の旧友ヨアンが一泊だけ我が家に泊まりに来ることになった。ドイツと言えば、確か現在はお隣さんのヨーロッパ諸国に対しても厳重に国境を閉じている。ヨアンはフランス人なので、致し方ない理由があれば自国に一時帰省できるということなのだろう。彼は今新しい仕事を探しているはずだ。

しばらく使わなかった客室をこれから整える。

 

春になって、少し動きの出てきたこの頃だ。