Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Sacré Charlemagne

学校を閉めるか閉めないか、それが目下のフランスのモンダイ。

 

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今朝もラジオで政府が高らかに「最後の最後まで学校は閉めません!」と宣言していた。随分がんばっている。お疲れ様だこと。

ヨーロッパ諸国の中でもフランスは、変異種ウィルスの飛び交う昨今にあって学校閉鎖をしていない唯一の国だという。なぜ?どうして?

 

国民の貧富や社会的レベルの格差が大きいので、学校を開放しないと子供達の教養に明らかな格差ができてしまって危険だ というのが表向きの理由。確かに、日本と違って移民も著しく多い。カルチャーの伝達は学校が大部分を担っている点は否めない。

けれどもその裏では、子供が学校に行ってくれないと親が働けず経済的ダメージに繋がる というのがもう一つの理由。学校閉鎖だけは避けてくれと訴える保護者が多いそうだ。その気持ちは、分かるような分からないような。

 

自由、平等を真っ先に国のモットーに掲げるフランス。学びたい子供達の自由を奪ってはいけない、平等な教育を受ける権利を子供達に確保すべし と言うと聞こえがいいけれど、要は単に、経済を回すのに子供達が足手纏いなのだ。学校を閉鎖しない理由は、大人の事情なのだ。

 

それにしても、いつから子供達はそんなに何もできないお荷物になったのだろう?

子供達が働かされていた産業革命時代のように、年齢に釣り合わない重労働から解放されたのは良いけれど、今度は逆に家の仕事さえ手伝う暇も能力もなくなってしまった。フランスの学校では子供達に家事や家族の手伝いを奨励することも全くない。掃除、洗濯、料理や配膳、子供の世話、心の相談、モノの修理、全て「専門職」化して経済活動に繋げるので、子供達は学校で頭に知識さえ入れて将来の経済活動に備えれば良いとされる。(因みにこの国における「主婦」の立場がすこぶる低いのは、まさに、そんな経済システムに乗っていないからだ。専門職どころか、何でも屋だからだ。完全にアウトサイダーなのだ。)

更に、フランスの子供達はある程度の年齢に達するまで保護者の付き添い無しには外出しないので、いつでもどこでもお付きの人が必要になる。そんな訳で、子供は大人の自由を奪うモンスターちゃん、経済活動のお邪魔ムシちゃんなのだ。やれやれ。

本来ならば、成長の早さから見て女の子なら10才、男の子なら12才にもなれば、料理や家事や買い物の手伝いくらい充分立派に出来るのになぁと思ってしまう。経済活動に参入せずとも、少なくとも家庭というミクロ社会では役立つ存在なはずなのに。何もできなくても済む子供を作ってしまうシステムがいけない。

 

それにしても、またもやケーザイという不思議な響き。この世がいかに、特に都心という場所がいかにお金を中心に回っているか だ。そもそも都会の構造は人が主役ではなく、お金が主役なのだと思う。経済活動に支障が出ると、都市の存在意義が危うい。経済活動がストップすると、もうそこに住む意味がない。お金が全能の神であった時代が、今、変容しようとしているのかもしれないけれど、「人」がなかなかそれを受け入れられないのだ。不本意にも、私自身も含めて。

 

現在フランスで流行りのブリタニック変異種や南アフリカ異変種というのは、原種に比べて感染率が高く、感染者の年齢層も下がっている。幸い子供で重症化した例はあまり挙がっていないので、学校は相変わらず門戸を開いている。一斉閉鎖の代わりに、感染者の出たクラスだけ部分的に数日閉めて、閉鎖と再開を繰り返す。これがなかなかに忙しく、明日の予想が付かないので落ち着かない。私は、いっそのこと長期閉鎖、長期ヴァカンスにすればいいのにと思っている稀なママンだ。世の中は、子供は学校に行かないと何もせずにおバカさんになってしまうと思っているようだ。私はこの一般論に全く同意しない変わり者なのだ。

自由というのは実はぜんぜん楽じゃない。自由な時間をどう過ごすか、何を見つけるか、どう管理するか。世の中が大きく変化している今の時点で、一度くらい子供達にそんな課題を与えてみてもいいと思うのだけれど。