Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Les poissons et les bonbons

4月に入った。

 

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水曜の夜、すでに恒例になりつつある20時の大統領のテレビ演説で、ウィルス対策の強化が発表された。変異種は感染力が強く手強いため、ついにフランスも来週から2週間の学校閉鎖が決まった。2週間後には再び2週間の春休みに突入するので、通算4週間のノースクールとなる。

小躍りして喜ぶかと思ったら、息子は意外にも今回は微妙な表情。勉強はサボりたし、友達とは会いたし。前回の学校閉鎖の経験で、たとえ学校に行かなくても勉強をボイコットできる訳ではないと知ったので、今回の反応はその辺りのことも含んでの事だろう。

 

私の方は、確かにママンの仕事がぐんと増えるけれど、今回の処置に正直なところホッとしている。感染者が見つかる度に突然予期せぬクラス閉鎖、自室で数日間の厳格隔離 (家族とも接触を最小限にするようにとの指示が出る)、ラボに出向いてPCRテストなんてことを延々と繰り返すよりマシだ。

 

発表の翌朝の木曜、4月1日はポワッソン・ダブリル (poisson d'avril 4月の魚 / エイプリルフール)。朝ごはんが出来るのを待つ間、息子はテーブルに向かって何やら熱心だ。珍しく自分から小テストの準備でもしてるのかしら?と思って肩越しに覗くと、雑誌に載っている魚の絵をチョキチョキ忙しそうに切り抜いている。これをクラスメイトの背中にこっそり貼ってイタズラしようという訳だ。まだまだ幼い彼だ。たくさんの魚とセロテープを袋に詰め、漁師の見習いは意気揚々と登校して行った。

 

夕方、学校から帰った彼にどうだった?と聞くと、「うん、たくさん貼ったよ。すぐ気付いた子もいたし、ずっと付けてた子もいたよ。そう言えば、守衛のムッシューは背中にた〜くさんくっ付けてたよ。」

子供達のイタズラとクスクス笑いに気が付きながら、背中に魚をたくさん貼り付けたまま放っておく寛大なムッシュー、あるいは、すっかり諦めきっているムッシューの姿が目に浮かんで可笑しかった。

学校閉鎖については、みんなどんな反応だったの?と訊くと、「喜んでた子もいたし、がっかりしてた子もいたよ」。どちらの方が多かったかと尋ねると、「喜んでた子のほうがいっぱいいた」とのこと。やっぱり。

 

金曜の今日は閉鎖前の最後の登校日。息子は珍しく目覚めが良い。彼にとって学校というのは、もう行かないと分かると行きたくなる場所のようだ。

ふと見ると、昨日切り抜きの魚で膨らんでいた手提げ袋が、今日も何やら膨らんでいる。何だろうと思って探ってみると、いつどこで手に入れたのやら、ボンボン(キャンディー)の大きな袋が2つも出てきた。私も夫も買い与えた覚えはない。端っこが少し開封されて、賞味した形跡がある。ははあ、さては先日友達と一緒に2人で下校させた時にスーパーに寄ったのだな、と察する。定期的なお小遣いはもらっていないけれど、パパは小銭をそこら辺に散らばしているので、息子はそのコレクターなのだ。これどうするつもりなの?と問い正すと、クラスでみんなにあげるのだとのたまう。彼は最終登校日を学期末のお祭りのように思っているのだろう。

それにしても、極端にお腹の弱い息子は、こういった類のジャンクフードを食べるとかならず調子を悪くする。ここ数日体調が思わしくなかったのはこのせいだったのかと合点がいく。心配して甲斐甲斐しく面倒をみた自分が間抜けに思えて、思わずふーっと溜息が出た。

Oh là là...

このくらいのことならまだ可愛らしいけれど、大きくなるに連れて親の望まない行動も増えていくのだろう。どう構えたらよいものか。ママンは終身業で気の休まる暇がない。

 

週末は親子会議を開いて、来る2週間のホームスクールをどのように運営していくか一緒に決めるつもりだ。晴れの日は朝の散歩を日課にするとか、昼食の準備や片付けを手伝ってもらうとか、食後は親子でチェスにトライするとか、学校がある時は出来ないことを取り入れていこうと思う。友達に関しては、お隣さんのヴェロニックの2人の子供と協同休み時間を時々組もうと計画している。屋外で少人数で集うのは政府も目をつぶるようだ。

宿題は山と出るし、お家で学校はなかなか大変だけれど、自分達で一日を多少なりともデザインできるのはメリットだ。

今回は日中に「ママンの邪魔されない時間」も定期的に組み入れようと目論んでいる。たとえ30分でもいいから。献身的になり過ぎると身が持たない。時々は譲らない努力だって必要なのだ。

 

昨日は26度まで急上昇した気温が、今日はその半分くらいで季節相応になり、更に来週の天気予報はなんとゼロ度表示と共に雪のマークまで出ている。これもポワッソン・ダブリルの冗談だろうか。昨日は夏、今日は春、来週は冬。季節の逆行だ。こういう土地に暮らしていると、季節感なんてシャレたことは言っていられず、実用主義にならざるを得ない。

 

毎年のように隣人の庭の桜が開花して、窓から見える光景が一遍の日本屏風のよう。心休まる。「来週の冬」に舞い戻る前に、そして4週間のステイホームに突入する前に、今日はこれから家の中を整えて対策を練る。

海原は高波続き。家は船、私は船長。そんな感じだ。