Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

La vierge et le taureau

忘れがたき、あの子

 

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先日、サントロペの町で一目惚れしたあの子。

赤いスカートを履いて、長靴下のピッピみたいに左右の靴下の色が違うあの子。牛の背中に乗って微笑んでいた。いや、正確には、牛のツノに捕まって、まるで旗のように軽やかに風にたなびいていた不思議な女の子。

シャガールの絵にも似た陶製の置物。ピカソの作陶の遊び心にも共通するものがある。通りがかった細道に面した小さなギャラリーのウィンドウに飾ってあった。

 

待ち合わせの場所に向かう途中で、先を歩く夫と息子が急かすので、急いで写真だけ撮っておいた。帰りに寄ろうと思ったのに、結局その道は通らず、夕方のサントロペは帰りの道路も混雑するので、また急かされて、探す時間もなく諦めたのだった。

 

それでも、やっぱり気になる。

その日は、横に付いていたタイトル札を読む暇もなかった。写真に収めておいたので改めて見てみる。

Roger Capron 1922 - 2008

なんと、この世にはもう居ない人の作品。作風からして若手作家だろうと想像していたので、意外な気がした。その上、無名の作家かと思いきや、知る人ぞ知るフランスの作陶家のようだ。陶器で有名なヴァロリスという南仏の町にアトリエを持っていたらしい。いつか母と訪れた町だ。

 

ギャラリーの名前を調べて電話をかけてみる。前を通りかかったこと、牛に乗った女の子の置物が気に入ったこと、値段を知りたい事を告げると、電話の向こうの若い女性は快く応じてくれた。「少々お待ちください」と言って電話口を離れ、ややもすると戻ってきた。

そして、肝心のお値段は・・・、ゼロを一つ取っても手が届かない。予想はしていたけれど、やっぱり。いや、正直なところ、予想以上の値段だった。

 

忘れがたき、あの子。

牛の背中に乗って、どこに行くのかな?

いつかまた、どこかで会えるといいな。