Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Sept jours de repos

春うらら

 

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我が家の居間には、東向きに大きな窓がある。

その窓辺には、ベンジャミンの鉢植えが置いてある。数年前、義理の姉のアンが引っ越し祝いに枝分けしてくれたものが、今ではすっかり大きくなった。

そして、このベンジャミンの鉢植えには、小さな可愛いお婆さんが住んでいる。お婆さんは、先がボサボサの箒にまたがって、東の空を目指している。お婆さんは、木彫りの小さな魔法使いなのだ。

 

小さな魔法使いのお婆さんは、はるばるポーランドからやって来た。いつだったか、義理の母が旅行から持ち帰った手土産だ。魔女と聞くと咄嗟にドイツを思い浮かべるけれど、そう言えばポーランドも魔女の国なのかしら。

 

お土産には、他にも、お揃いの生地で出来た鍋つかみとエプロン、民族衣装姿の女の子の模様の布巾も数枚あったのだけれど、私はこの木彫りの魔女が一番気に入って、どこに飾ろうか色々考えた挙句、ベンジャミンの木陰にぶら下げることにした。クリスマスツリーの飾りみたいに。魔女だから、あんまり人目につくのも好まないだろうし、だからと言って、誰の目にも止まらないのでは寂しがるだろうと思って。それ以来、ここが彼女の住処になった。

 

うららかな春の朝、東の空から顔を洗い立ての太陽が覗いて、窓辺のベンジャミンの葉っぱを明るい黄緑に照らす様子は、なんとも平和で幸せな光景だ。床に落ちるその影もすてきだ。小さな魔女も朝の日光浴。魔女は夜のほうがお好きじゃないのかって?「いえいえ、あたしゃ早起き派の健康的な魔女でねぇ。」ニヤッと笑って、そんな風に言っているみたいだ。

 

木曜に息子が高熱を出し、続く土曜には私が発熱した。薬局で買ったキットでセルフチェックを行ったところ、なんと陽性。室内でもマスクが解禁になり、ワクチンパスポートもようやく必要なくなった途端にこれだ。喜び勇んで友達と出かける暇さえ無い。水曜日に息子が歯列矯正のドクターのところで、ママンの厳しい勧告も聞かず、洗いもしない手を直接口に突っ込んだからいけないのだ。

 

とにかく、症状が出た日から数えて7日間は学校を休まなくてはならないので、すっかり元気になっても、息子君は陽光の射す居間のソファーで悠長に寝っ転がって読書。でも、たまには平日にこういう時間があるのもいいな と思ったりする。

2日ほど熱が出た以外に、噂に聞いていたような症状は全く無かった。敵も弱体化しているらしい。周囲の友人達の実に半分以上は既に一度は罹っているので、とうとう私達の番が回ってきたのだ とくらいに受け取っている。これでしばらく免疫ができたというもの。

 

朝寝して、夕寝するまで昼寝して、時々起きて居眠りをする

 

重症化さえしなければ、ちゃんと回復さえしてくれるのならば、病はちょっとした小休止のチャンス。三日間ほど、台所仕事以外は一切を一時放棄してみた。こんなにのんびりして、こんなに寝たのは久しぶりだ。以前より元気になってしまったくらいだ。