Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Happy windy birthday

誕生日の覚え書き

 

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1月14日

朝から晩まで雨と風の吹き付ける天気ではあったけれど、ジョーク好きの息子から Happy Beurre ´z day to you と書かれた電子カードを受け取り(黄色いバターのたっぷりかかったケーキのイラストが付いていた)、夫からはカーネーションとバラの入った花束をもらった。なにせ居間のカレンダーに黒々と記しておいたから、2人とも忘れようがなかったのだろう。

 

昼食には、リースリングワインとパセリをたっぷり入れたボンゴレスパゲッティーを作り、夕飯は夫がホタテ貝を焼いてくれた。味付けせずとも自然に塩見の効いた、今までに見たことも聞いたこともない浜辺の植物を付け合わせに。見た目は金魚鉢に入れる水草を太らせたような具合で、サリコーヌ (Salicorne) という名前らしい。ホタテを買った魚屋のムッシューに勧められたのだそうだ。海藻のように見えるけれど、潮風の吹く陸地で育つ塩生植物と呼ばれる種類で、調べると日本語では厚岸草(アッケシソウ)と呼ぶらしい。

息子がそれを味見しながら言うには、図書館で借りて読んだマンガに登場する魔術書の中に、ちょうどこの浜辺の植物が材料として使われていたとか。誕生日に、魔術書に登場する霊験あらたかな植物をご馳走にあやかるとは、ありがたい話だ。

それにしても、パパ譲りで植物に全く興味のない息子が、こんな風変わりな誰も知らない草を覚えていただなんて。案外脈ありなのかも知れない と、こっそりほくそ笑んだ。

 

夕食の後は、オスカーワイルドの終の住処として名を馳せるこじんまりとしたホテルのバーで、女友達を招いて総勢6人のささやかなソワレを開いた。この気の利いたホテルを勧めてくれたのは、参加者のひとり、アデルだ。数日前に下見に訪れて、私も一遍に気に入ってしまった。

ショッキングピンクの封筒に花柄の切手を貼って、いかにもオフィシャルなソワレかのように招待状を出してみたり、手書きの「お飲物無料券」を付けてみたり、子供時代のお誕生日会の時のように、準備の段階で既にわくわく楽しんだ。

ちゃっかりドレスコードも添えてみた。「オスカーワイルドに敬意を込めて、どうぞ文学者スタイルでお越しください」と。実は「幸せな王子」くらいしか読んだこともないくせに。我が淑女達に、「ドリアン・グレイの肖像」は素晴らしいので一読の価値があるわよ と勧められた。

 

当日は、ふと思いついて両親の若い頃の写真を数枚持って行き、自慢して見せたりもした。いつかサミアが写真を見たいと言っていたのを思い出したから。自分の生い立ちを振り返るという意味で、この日ほど両親を紹介するのに相応しい日はないと思った。

そう言えば、偶然にも、私の誕生日はサミアのママンの命日に当たるそうだ。思えば、お互いの母親を同時期に亡くしてから、私たちは急速に仲良くなった気がする。

 

普段は早寝のキャロとユキさんは、カクテルの酔いも手伝って、夜が更けるにつれて瞼が重くなっていくのが目に見えて可笑しかった。それでもニコニコしながら遅くまで付き合ってくれたことに感謝。

 

姉御肌のソニアからは、すらりと伸びた長い枝先に、見目麗しいピンクの大輪の花を付けた蘭の鉢植えを貰った。「あなたは緑の指を持ってるから」と。花のみならず、その言葉もとても嬉しかった。

つくづく幸せな一日だったと思う。

 

 

ついでに新年の抱負を記しておくならば、今年は動く年にしようと思う。

チェスも覚えるつもりだ。

ささやかだけれど、たったそれだけでも貫いて実行していきたい。

そういえば、バースデーを祝ったホテルのバーにちょうどチェス板が飾ってあった。空からワイルドがウィンクしていたのかも知れない。「ルールを覚えてまたいらっしゃい。次回はここでゲームしよう」とね。