Entries from 2019-01-01 to 1 year
彼のお父さんは、数学者にして音楽家。 だから、時を図る手立てがなかった時代に、彼は音楽で振り子の速さを測ったのですって。 シェークスピアとは同い年。 王宮のメディチス家にちょいと lèche bottes おべっか遣いしてみたり。 科学において、doute (ダウ…
夢を見た。ひどく悲しい夢だった。 実家のドアの鍵が開いていて、中に入ると、母と親戚が黒い服を着て、台所でこちらに背を向けて料理をしている。何かがおかしい。 テーブルの上に1人用の食事が置いてあって、でも、そこに居るはずの父の姿が見えない。 振…
午後。美味しい紅茶と素朴なガトーを頂いた。 パリのとある小さなサロン・ド・テで、「ルイ14世とグルマンディーズ」というようなお題目のコンフェフォンスがあった。 一杯のお茶や濃厚なショコラショに、当時宮廷で好まれていたガトーを添えて楽しみながら…
すっかりぶどうの季節です。 くだものの話をすこし。 フランスで素敵なことの1つは、やさいくだものが手頃な値段でふんだんにあること。フランソワーズみたいな名前のフランボワーズや、大粒のブルーベリーといった、乙女心をくすぐるフリュイ・ルージュ(赤…
見上げると、うっとりするような優美な天井。 視線を落とすと、ここは子供達で賑わう科学博物館。 Le palais de la découverte. 何に触発されたのか、唐突に、学校で稲妻についての発表をしたい とのたまう息子と、その友達5人を連れて、大所帯で館内を巡る…
今日のお昼ご飯は、名付けて しあわせご飯。 3日かけて発芽させた黒玄米を、分厚い土鍋でふつふつ炊き、それをさらに3日寝かせて軽く発酵させた 寝かせ玄米ご飯 だから。 ふっくらとして、もっちりとして、ほのかに立ち上る湯気が香ばしい。 そこに、日本か…
いつも通る道のリキダンバーの葉が、今年も紅く染まり始めた。 その落ち葉は、レオレオニーの絵本の切り絵のお星様みたい。 まっくろくろすけにそっくりなイガイガの実が、クリスマスツリーの飾りのように吊り下がる茶目っ気のある木。 和名はなんというのだ…
天気の良い土曜の朝。 ベルサイユの街に用事があって出かけ(低層の建物の並ぶチャーミングな街だ)、待ち時間があったので、偶然目に入った coffee shop (カフェではなくて)の看板を掲げた店に入る。私はマッチャラテ(最近よくカフェで見かけるようになった)…
母のことを話そう。 たくさん本を読んでくれた。 八重洲ブックセンターは私達のお気に入りのお出掛け場所で、母は幼い頃から私の良き水先案内人だった。 センダックも古田足日も、イソップ物語もギリシャ神話も、一緒に寝転がって母が読み聞かせてくれた。 …
気が付くと、「時間がない」をよく繰り返していた私。 でも本当のところは、 時間なんて人間の作り出したもの。 だから、振り回さるのではなく、もっと自在に伸ばしたり縮めたり、自分でデザインできるはず。 時間は作るもの。 そうね。 そうかもしれないね。
また買ってしまった。3冊も。 それを携えて行きつけのカフェに落ち着き、待ち合わせの時間まで1時間あるので、ドゥブルエスプレッソを頼む。 昨日、ようやく本棚の整理をして、もうしばらくは買うまいと誓ったのに。 いきさつはこうだ。 以前から気になって…
フォークとナイフに関する考察 いつか、インテリアの店で食器を物色していた折に、一緒にいたジゼルに聞かれた事がある。 「あなた達はまだ箸を使っているの?」 「まだ」という表現に苦笑した。 フランス人の彼女にとって、箸は「不便な道具」ということら…
先日はカフェで真っ直ぐに身体をの伸ばしているクロワッサンを頂いたけれど、今日は腕組みしているクロワッサンを見かけた。 身体の前で手と手を合わせて、まぁ、お行儀の良いこと。
浸して食べる というのは、フランス人好みの食べ方の1つと言えよう。 フランス語では、tromper (トロンぺ/浸す)、あるいは mouiller (ムイエ/濡らす、湿らせる)という言葉を使う。 フォークもナイフもスプーンも使わず、つまみ食い や 食べ歩き と同じカテ…
この夏に訪れたカンタベリーから連れ帰ったベゴニア。 ヴァカンスが明けてからも、細い鎖にぶら下がった耳飾りのような真紅の花を常に咲かせて目を楽しませてくれる。 四方に伸ばした腕の先には、次の蕾が待機していて頼もしい。 ベゴニアは、記憶によると乾…
朝のカフェにて クロワッサンとエスプレッソを頼む。 ありきたりなパリの朝食。 眠り損ねた昨夜をぎゅっと抽出液にしたような、深く濃厚なエスプレッソが運ばれてきて、コトリとテーブルに着地する。これをすすると眠気が醒めるのは、身体の欲する夜の必要量…
オペラ界隈に用事で寄ったついでに、気になる監督の映画を見た。 Deux moi 映画館の切符売り場のマダムは、長身に紺の制服とオシャレなメガネ、そのメガネの奥の長いまつ毛に厚く塗ったマスカラが似合って、いかにもパリジェンヌらしい。こちらをちらっとだ…
先日の火曜、私の住まいからすぐそこ (フランス語で言うところの à trois pas / 3歩のところ) の素敵な一軒家に住んでいるキャロリーヌ宅で、女仲良し3人組が集まって朝のお茶を楽しんだ。 キャロリーヌは、壁を隔てた隣の空き家が売り出され、兼ねてから夢…
特にそれらしい理由も見当たらないのに、なんとなく普段よりソワソワして落ち着かず、今日は月のものが来る日だったかしら?まだ数日先のはずだけれど なんて思った日の夜に、空を見てハッとすることがままある。 そういった日は、概して(ほぼ)満月なのであ…
春うららかな1日の終わり、テレビをつけたら、 私がパリに初めて来た日、タクシーの車窓越しに一番はじめに目に飛び込んできたパリの宝石、ノートルダム寺院 が燃えていた。 ショックで、洗濯物をたたんでいた手がパタリと止まる。 実況中継の声が伝える。 …
満開のぼたん桜の木の下、 この街では誰も足を止めたりしないけれど、 サクラ チル 今年もやって来た春は、 また去っていこうとしている。
アパートの中庭のイチジクの木は、日に日に新芽が大きくなっていく。 グレーのスウェードの肌をした枝先に、ちっちゃな手のひらを広げたような新緑が眩しい。 毎日ここを通る度に、マチスの切り絵みたいだな と思う。
小さな春の詰め合わせ 散歩の収穫。 木蓮のつぼみ、雪柳、そして桜。 どれも息子が「ぼくが取ってあげる」と言って摘んでくれたもの。 木蓮は、つぼみは取らないでね と言う暇もなく、ポキっと折って手のひらに乗せて戻ってきた。 つい最近まで、散歩の途中…
黄色いごはんのお話です。 台所でジャージャーと炒め物をしていると、食いしん坊の息子が覗きに来た。 今日のご飯はなぁに? 今日はチャーハンよ フライパンで、サイの目に切ったズッキーニと赤いパプリカを炒めているところだった。そこに冷やご飯をパーッ…
パリに春が来た。 一晩眠って、今朝家を出ると、すっかり春だった。 ハナミズキに似た名前も知らない街路樹の白い花が、一斉に満開になっている。 朝な夕なに通る道が、一晩で花道に変身するのは素敵だ。 それが通勤路だったら、 「いってらっしゃーい いっ…
息子を学校に送った後、なんとなくそのまま家に帰るのに気が向かず、珍しくカフェでプチ・デジュネ(朝食)と決め込む。 Madame, que désirez-vous ? Une tartine sans beurre avec de la confiture s’il vous plaît ! 銀のトレイに、ざっくりと半分に割ったバ…
息子が海の学校 (classe de mer/ いわゆる臨海学校)で拾ってきた貝が、居間のテーブルの上に一列に並べて置いてある。 この貝は何て名前だったかしら。 確か、フランス語で 中国人の帽子 (chapeau chinois) というあだ名(?)だったと記憶しているが、肝心の…
ずっと前に買って、しばらく忘れていたマリー・スチュアートの本。 読み始めよう。
友人で画家のアデルのアトリエに、初めて遊びに行った。 その名も rue de paradis, パラダイスと名のついた通りにあった。 ホモセクシュアルのサイコテラピストの寝ぐら 兼、現場に出ていてほとんど姿を現さない建築家のオフィス 兼、墨絵とコラージュを表現…
セーヌのカモメ 毎日アンニュイな灰色の空模様が続く冬。 久々に晴れ間が出たところで散歩に出た。 パリに海はないけれど、セーヌ河にはよくカモメが集っている。 2000年にここに住み始めた頃、果たしてこんなにたくさんカモメがいたかどうか。極めて印象に…