Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Il s’appelle Acrobate

マリーンのところの猫 先日お昼に呼ばれた友人マリーンのところには、息子が3人、夫がひとり、猫が一匹住んでいる。猫はもともと拾いネコで、聞けばやっぱりオスなのだと言う。 男の子ばっかりの「デスタン (宿命) ね」と言うと、笑って肯定するマリーンだ。…

Madeleines de dimanche

ときどき作りたくなるらしいのだ。 日曜の午後に一念発起して、 3年に1度くらいの、夫のマドレーヌ。 確かに、お菓子作りには、ある種の癒しの効果があると思う。 卵の黄身にお砂糖を加えて、泡立て器で混ぜる時の色やテクスチャーの心地良さ。バターがいか…

Faiblesse des hommes

男の人の弱さとは 本来ならば、満月の夜。 昼間から曇り空で、湿った風が吹いていたのが、夜になり激しい嵐になった。満月まで吹き飛ばされて姿が見えない。 乱暴な風が、居間のガラス窓目掛けて思いきり身を叩き付けてくる。バルコニーのオリーブの木を荒々…

Temps d’attente

待っている時間 待っている時間は、いたずらに長い。 待っている時間は、なかなか過ぎてくれない。 待っている間は、どうしても待ち遠しい。 その言葉通り、待てば待つほど遠くなるのだ。 では、どうすればいいのかと言うと、 上手に待つためには、待たなけ…

Itinéraire

今年も、星の朝のセゾンがやって来た。 まだ太陽の出ない8時前。 息子を学校まで送る。空は紺色。表は黄色い街灯が煌々と灯っている。 昨晩の雨は降り止んで、洗い立ての世界はまだ湿った匂いがする。久々に澄んだ冷たい空気。肺一杯に吸い込む。 門の前で頬…

Petite pensée nocturne

夜、窓の向こうで、雨が地を打つ微かな音がする。 晴れの日が好きだけれど、久しぶりに降る雨には心がほっと安堵する。 挽いたコーヒー豆に、回しかけたポットのお湯がじわじわと染み込むように、黒い土に細かい雨がしっとり染み込んで、根を潤した植物達が…

Éloge au fruit sacré

イチジク賛歌 今年も、イチジク。 なだらかな曲線を描く紫の実は、教会に祀られた聖母マリアさまの石像の乳房のよう。 少し尖って形よく、品がある。 店先でその姿を見かける度に、心を掴まれ、密かにときめく。指先でそっと選らび取り、慎重に紙袋の底に納…

Café, Cosmos et tomates

パリは美しい秋晴れの日が続いている。 土曜の朝。 久々に仲良しが集まって、キャロリーヌのお屋敷 (風格のある家なので私はそう呼んでいる) のキッチンで、女3人かしまし朝のお茶会となった。 窓越しに見える庭には、背の高いコスモスがたくさん咲いていた…

Parfum d’automne

パリにない花の香り 最近、街を歩いている時に、ふとどこからか金木犀の香りがしたことが二、三度あった。周りを見渡すけれど、それらしい木も花も見当たらない。 だいたい、フランスで金木犀を見かけたことがない。いつか中国を旅した時、金木犀で有名な小…

Une longue journée

雨、時々くもり、のち晴れ 激しい雨の中、停留所で、傘をさしてぼんやりバスを待っていた。 と、「サリュー!」と明るい声がして、誰かが顔を覗き込んできた。雨を滴らせた紺色のレインコート姿が頭を傾げている。頭からすっぽりキャップを被ったキャロリー…

Absence d’anomalie

10月最初の日。 今朝の気温は10度にも達しない。 トレンチコートをひっかけて、先日の診察に引き続き、今朝は数々の検査を受けに行った。ラボに赴き、ドクターの出した書類を提出して、腹部やら喉やらのエコグラフィーを撮ってもらう。 結果から言うと、どこ…

Blue Monday ?

雨の月曜日 街路樹のマロニエの葉が黄金色に色付き始め、雨に散ってタピスリーのように歩道を覆い、詩情がある。秋のパリの風物詩のひとつだ。 ブルーマンデーとはよく言ったもので、月曜の朝は息子の寝起きがすこぶる悪い。肌寒い季節に入り、雨降りの朝と…

Ma collection

近況 友達とバスに乗って古本を売りに行った。 彼女は現在、人生の整理整頓をする時期にいる。取り敢えず、身辺の「モノ」の整理から手を付けるのが理に叶っているので、必要最低限のもの以外は手放す作業に勤しんでいる。そこへ私も便乗させてもらうことに…

Etre heureuse

最近ずっとインディアン・サマーが続いていたけれど、今日は時々雨が降って夜半は涼しくなった。 夫は、カイシャから帰るなり、薄手のセーターに腕を突っ込みながら、「ほーら、秋が来た」とのたまう。まるで「覚悟しろ」とでも言うような口調で。 彼曰く、…

Mon père

毎日いろいろなことがいっぱい起こって、思うこともたくさんあって、日々の記録に残す暇も見つからないまま、時間が超特急で過ぎていく。 今日は、父伝にご縁があり、日本からパリの大学に交換留学中の20歳の女の子2人を、我が家にランチに招いた。歳の違う…

Meilleure boisson ?

我が家はオリーブオイルを飲むように消費する。 例えば、1Lの瓶なんて一週間くらいで空になる。 昨日、近所で珍しく獅子唐を手に入れたので、どう料理しようかちょっと思案して、結局、得意のオーブングリルにすることにした。 オーブン料理の楽しみは、中に…

La rentrée

朝の光景 朝のバゲッドを買いに出た。 空は快晴。途中の坂の上にある花壇に朝日が当たって、秋の花々が美しい。足を止めて写真を撮っていると、後ろからゆっくり坂道を登ってきたマダムに声をかけられた。 C'est vrai que c'est jolies...! 「ほんと、綺麗よ…

Les constellations

星座 一見なんの関係性もない点と点を幾つか繋いでみると、思いがけなくある形 (意味) が現れることがある。星と星を繋いで描く星座に少し似ている。 点繋ぎを構成するひとつひとつの点をどのように見付けるのかと言うと、それは努力の賜物であったりもする…

Pourquoi écrire

ひとりごと 今日は「書く」ということについて考える機会を得た。 どうして書きたいと思うのか と言うと、言葉こそ一番自由な表現手段だと思うから。 ダンスも、音楽も、絵画や彫刻もステキな表現手段だけれど、言葉さえあれば何も特別なものを必要としない…

Le début de la fin

晩夏のパリ 南仏からパリに戻り、一番最初に電話をくれたのは、同郷の友ユキさんだった。図書館の下で会おうと約束して、夕方のひと時、夏休みの報告をし合った。 子供達は親戚の家に泊まりに行ったので、8月の一ヶ月間、彼女はフリーな時間を得ていた。自由…

Paris Presto

パリに戻ると、急に時間がなくなるのは何故だろう。 私にとってパリは日常生活の場で、南仏はヴァカンスの場所だから、単にその違いかな?普段、田舎で生活している人は、逆に観光で都会に来ると時間がゆっくりになるのかな? ヴァカンス終了後、仕事や学校…

Sentimental journey

長い長い覚え書き ヴァカンス先からパリに戻る旅は、いつだってちょっとセンチメンタルだ。 南仏からの帰り道は、私と夫と息子の3人に義理の姉アンが加わった。夫は最近作ったメガネの度が合わず、念のため高速道路はアンが終始ハンドルを握ることになった。…

Au revoir l’été

南仏最後の日は、朝から一日大掃除。 荷物を集めてトランクに押し込み、シーツを剥がして洗っては干し(あっという間に乾く)、広い床に掃除機をかけ、家中の埃を払い、床を拭く。庭の長椅子を畳み、ガーデンテーブルをガレージに片付ける。このあたりで12時に…

Sirop de cyprès

糸杉の実のシロップ ゴッホがよく描いた糸杉は、南仏でよく見かける木のひとつ。千年を悠に超え、二千年生きる木もあるのだとか。人間の一生なんて比にならない。 南仏の庭には糸杉の垣根がある。真下から見上げると首が痛くなるほど背が高い。二階建ての家…

Nuit éclairée

月の明るい晩 輪廻転生というシステムを信じるメリットは、未来の世界に無関心ではいられなくなる点ではないかしら。また別の命として生まれ変わるのであれば、明日の世界が悲惨であっては困る訳だから。 新種ウィルスの猛威や、ワクチンパスポート賛否の話…

La paix

朝の時間は平和な時間。 台所の窓からは背の高い糸杉 (cyprès) が見える。その向こうに、白い石灰質の丘が見える。そして、とても静か。 朝の時間はすてきな時間。 不思議なことに、鳥の囀りはほとんど耳にしない。南仏の太陽は強烈なので、彼らは別の場所で…

Dîner sur les sables

砂の上の食事 義理の母を誘い、夕方の海辺に繰り出した。 幅の狭い砂浜は人でびっしり。腹這いだったり、仰向けだったり、思い思いの格好で甲羅干ししている人々の間を縫って歩く。なんとかスペースを見付け出して、肩から提げていたアイスボックスを下ろし…

Les mûres mûres

今朝の朝ごはんは、 家の近くの小径で摘んだクロイチゴ (桑の実)。 ここ数日の猛暑で、しっかり黒々と色付いた。ちょうど朝の果物を切らしていたところだったので、ありがたい。 南仏の家は近所に商店がないので、買い物に出るのは週に一度だけ。車で倉庫の…

La fête de l’Assomption

8月15日、聖母マリアの被昇天祭。 キリストの母、マリア様が天に召された日。一種の母の日のようなものだと勝手に解釈している。 それにしても時々思うのは、敬虔なカトリック信者の人たちは、聖母の処女説を信じているのだろうか?それとも、その辺りは語ら…

La vierge et le taureau

忘れがたき、あの子 先日、サントロペの町で一目惚れしたあの子。 赤いスカートを履いて、長靴下のピッピみたいに左右の靴下の色が違うあの子。牛の背中に乗って微笑んでいた。いや、正確には、牛のツノに捕まって、まるで旗のように軽やかに風にたなびいて…